Blog — 京都
無料で歩ける日本最古の現役庁舎と、
その中のカフェ。
京都観光といえば、あなたはなにを思い浮かべますか?
お寺? 神社? 観光客でごった返しているイメージ?
実は、寺社仏閣以外で、観光客が少ない“ゆったりできる洋館”があるんです。
このモダンな建物は旧京都府庁(正式には京都府庁旧本館)。1904年(明治37年)に建てられ、激動の明治・大正・昭和を生き抜いた歴史的建物です。
清水寺や金閣寺と比べると歴史は浅いですが、平安・室町時代にはない“モダンな”空気感が旧京都府庁の魅力なんですよね。
しかもここ、ただの古い建物じゃないんです。
昭和46年(1971年)まで、67年間ずっと京都府庁の本館。そして今も執務室として使われています。創建当時の姿をとどめる現役の官公庁の建物としては、日本で一番古い。
つまり僕たちは、今日も誰かが働いている建物の中を、勝手に歩かせてもらっているわけです。
旧京都府庁といえば、旧知事室や旧議場と正庁です。天井や彫刻に、当時の面影が所々残っています。旧知事室の机は、明治から昭和にかけて24人の知事が実際に使ったもの。旧議場は現存する日本最古の議場だそうです。
しかし、僕が旧京都府庁でおすすめしたいのは“階段”と“廊下”、“中庭”、“カフェ”です。
有名どころは、行けば誰でも感動します。この記事ではその間にあるものを歩きます。
入ってすぐ、心を持っていかれます。
見てください。入ってすぐに現れる美しい大階段を。
アーチ状に丸みを帯びている柱、手すり、窓枠。目の前にあるものすべてが白く、窓から見える新緑がいいアクセントを出してます。
絶対みんなここインスタ上げるでしょ。
細かい花の彫刻など、ひとつひとつに力強さを感じられて、美術品を見るような感覚に陥ります。
ちなみにこの階段、手すりは大理石なんだそうです。触るとひんやりします。
飴色の手すりと赤い絨毯に白い壁が、非日常感を作り出しています。
この建物、外観はバリバリの洋風(ルネサンス様式といいます)なのに、中に入ると随所に和風の技術が使われているらしいです。京都府の公式サイトには「建築というより工芸品の趣」とまで書いてありました。言われてみると、洋館なのにどこか落ち着くのは、そのせいなのかもしれません。
映画のセットみたいですが、現役の職場です。
アーチが規則正しく並んで、その奥にまた扉が見える。まっすぐ伸びる廊下って、それだけで気持ちいいんですよね。
左の壁、塗装が剥がれているのが見えますか。あとで戻ってきます。
120年ぶんの手垢、と言うと汚く聞こえますが、これだけの人が触ってきたということです。磨き直された展示品には、この色は出ません。
廊下を歩いていると、こういう扉に出会います。
扉に貼られた「締切り」の札。そして横に吊られた看板には「京都地方税機構 業務課」。
京都地方税機構というのは、京都府と府内25の市町村が一緒に税金の仕事をするために作った組織です。つまりこの扉の向こうでは、今日も誰かが税金の仕事をしている。
「締切り」の札も、よく見ると下に小さく「京都地方税機構」と印字されています。観光施設の「立入禁止」ではなく、役所が自分の業務のために貼った掲示です。
重要文化財の扉に、事務的な札。ここが観光施設ではなく、まだ機能している役所だという、いちばん分かりやすい証拠だと思います。
こういう一角もあります。壁の塗装が剥がれたまま。
きれいに修復された正庁や議場と、こういう場所が同じ建物の中にある。保存と現役のあいだにある建物、という感じがして、僕はここが結構好きです。
中に入った人だけが見られる景色。
アーチ状から見た中庭。
中央の桜は、八坂神社の上にある円山公園のしだれ桜の血を引いています。正確には、円山公園の初代しだれ桜の“孫”にあたる木。初代は昭和22年に枯れてしまったので、今の円山公園に立っている二代目とは、兄弟のような関係です。
桜を囲む植物は円山公園を彷彿とさせます。これは狙った演出なのでしょうか?
明治6年(1873年)、円山公園の初代しだれ桜が伐採されかけたことがあります。それを買い取って京都府に寄付したのが、当時の京都府の役人でした。円山公園の桜を救ったのは、京都府だったんです。
その31年後にこの建物が建ち、中庭にその桜の血を引く木が植わっている。偶然じゃなくて、続きだったわけですね。
四方を建物に囲まれた、ロの字の中心にある庭です。外から見ることはできません。この建物の中に入った人だけが見られる景色です。
そしてここ、春はとんでもないことになります。
中庭には6種7本の桜が植わっていて、そのうちの1本には「容保桜(かたもりざくら)」という名前がついています。この場所、幕末は京都守護職の屋敷があった場所で、そのトップだった会津藩主・松平容保にちなんだ名前です。
新選組を預かっていた、あの容保です。あの人がいた場所に、今この建物が建っている。
……という話は、桜が咲いてから改めて書きます。今回は緑で許してください。
建物の中に、あります。
さて、ここまで歩いてきて、そろそろ座りたくなってきますよね。
建物の中にカフェがあります。
その名も「salon de 1904(サロン・ド・イチキュウゼロヨン)」。1904は、この建物が竣工した年です。運営は、京都の老舗前田珈琲。
見てください、この空間。
白い壁、茶色の腰板、赤い絨毯。これ、内装を作り込んだわけじゃないんです。 府庁本館時代のものをそのまま使っています。テーブルや椅子も、一部は旧本館や旧知事公舎で実際に使われていたもの。
ちなみにこの部屋、元は人事委員会室だったそうです。人事の面談してた部屋でコーヒー飲んでる。(そう考えると急に緊張してきませんか?)
天井を見上げると、塗装が剥がれかけたところにシャンデリア。
新品みたいな内装のカフェもいいですが、僕はこういう「時間が経ってしまったもの」のほうが落ち着きます。
前田珈琲といえば、これ。分厚い玉子焼きがパンから溢れそうになっているやつです。重要文化財の中で食べる玉子サンド、というだけでもう勝ちなんですが、普通に美味しいので困ります。
前田珈琲は1971年創業。半世紀愛された珈琲店が、120年の建物の中で店を出している。 この一皿の背景、なかなか濃くないですか?
ここ、行く日を間違えると建物の中に入れません。
旧知事室も旧議場も、見られる日が決まっています。
| 内容 | |
|---|---|
| 見学できる日 | 火曜〜金曜、第1・第3・第5土曜 |
| 見学時間 | 10:00〜17:00 |
| 見学できない日 | 月曜・日曜・第2・第4土曜・祝日・年末年始 |
ややこしいのが、カフェは無休だということ(元日を除く)。
つまり、カフェは開いてるのに建物は見学できない日が存在します。日曜に行って「珈琲は飲めたけど、知事室も議場も見られなかった」という、いちばん惜しいパターンが起こりうる。
行くなら平日の火〜金。これが正解です。
※10名以上で行く場合は事前予約が必要です。また、京都府の行事等で見学できない日があります。遠方から来る人は事前に公式サイトで確認を。
入場料、無料です。
重要文化財で、現役の官公庁で、日本最古で、写真も自由に撮れて、老舗の珈琲まで飲めて、タダ。
京都は「点」で回るともったいない街だと思っています。有名な寺社の間に、こういう場所が普通に挟まっている。しかも空いている。
清水寺の人混みに疲れたら、ここに来てみてください。同じ京都とは思えないくらい、静かです。
次は春、桜が咲いた頃にまた来ます。中庭では毎年「観桜祭」が開かれていて、夜のライトアップもあるそうです。そのときは、この建物がなぜここに建っているのかも含めて、もう少し踏み込んで書きたいと思っています。
あと、ここから歩いて15分ほどのところに二条城があります。そっちもいずれ。
それではまた。
京都府庁旧本館
京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町
地下鉄烏丸線「丸太町駅」から徒歩約10分/市バス「堀川下立売」から徒歩約7分
見学:火〜金、第1・3・5土曜 10:00〜17:00(祝日・年末年始を除く)
入場無料
salon de 1904(前田珈琲)
旧本館1階南東角
8:00〜17:00 定休日なし(元日を除く)
075-414-1444
※記事の情報は2026年9月時点のものです。見学日・営業時間は変更されることがあります。訪問前に京都府および前田珈琲の公式サイトで最新情報をご確認ください。
※建物の歴史・仕様は京都府公式サイトおよび文化庁の記載に基づきます。手すりの材質は現地案内による伝聞です。
※館内は執務中の場合があります。職員の方や他の見学者の迷惑にならないよう、静かにお願いします。
住んでる人が本当に通う店だけ、4軒。
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