Blog — 京都

旧京都府庁は、
今日も誰かが
働いている。

無料で歩ける日本最古の現役庁舎と、
その中のカフェ。

2026.09.03 | ゆうや

赤い絨毯の廊下を床すれすれの高さから。奥にアーチの木の扉、左の扉には「特別参与室」の看板
赤い絨毯の先に、扉。この奥で、誰かが働いています。

京都観光といえば、あなたはなにを思い浮かべますか?

お寺? 神社? 観光客でごった返しているイメージ?

実は、寺社仏閣以外で、観光客が少ない“ゆったりできる洋館”があるんです。

青空の下の京都府庁旧本館の正面外観。ルネサンス様式の煉瓦造2階建て
これが旧京都府庁。正面のビャクシンは樹齢300年超だそうです。

このモダンな建物は旧京都府庁(正式には京都府庁旧本館)。1904年(明治37年)に建てられ、激動の明治・大正・昭和を生き抜いた歴史的建物です。

清水寺や金閣寺と比べると歴史は浅いですが、平安・室町時代にはない“モダンな”空気感が旧京都府庁の魅力なんですよね。

しかもここ、ただの古い建物じゃないんです。

御影石の門柱に掲げられた緑色の「京都府庁」の門標
「旧」がついていません。現役です。

昭和46年(1971年)まで、67年間ずっと京都府庁の本館。そして今も執務室として使われています。創建当時の姿をとどめる現役の官公庁の建物としては、日本で一番古い

つまり僕たちは、今日も誰かが働いている建物の中を、勝手に歩かせてもらっているわけです。

見どころは、有名どころだけじゃない

旧京都府庁といえば、旧知事室旧議場正庁です。天井や彫刻に、当時の面影が所々残っています。旧知事室の机は、明治から昭和にかけて24人の知事が実際に使ったもの。旧議場は現存する日本最古の議場だそうです。

しかし、僕が旧京都府庁でおすすめしたいのは“階段”と“廊下”、“中庭”、“カフェ”です。

有名どころは、行けば誰でも感動します。この記事ではその間にあるものを歩きます。

階段

入ってすぐ、心を持っていかれます。

見てください。入ってすぐに現れる美しい大階段を。

京都府庁旧本館の正面玄関を入ってすぐの大階段。白い手すりと3枚の窓越しの新緑
これです。

アーチ状に丸みを帯びている柱、手すり、窓枠。目の前にあるものすべてが白く、窓から見える新緑がいいアクセントを出してます。

絶対みんなここインスタ上げるでしょ。

違う角度で見ると、また違った魅力が

大階段を踊り場の高さから見下ろした別角度。花の彫刻が施された親柱と手すり
親柱の花の彫刻。ひとつひとつ、力強い。

細かい花の彫刻など、ひとつひとつに力強さを感じられて、美術品を見るような感覚に陥ります。

ちなみにこの階段、手すりは大理石なんだそうです。触るとひんやりします。

有名どころの階段以外も、味がある

飴色の木の手すりと赤い絨毯の階段。アーチの向こうに窓と新緑
こっちの階段は、木と赤絨毯。

飴色の手すりと赤い絨毯に白い壁が、非日常感を作り出しています。

この建物、外観はバリバリの洋風(ルネサンス様式といいます)なのに、中に入ると随所に和風の技術が使われているらしいです。京都府の公式サイトには「建築というより工芸品の趣」とまで書いてありました。言われてみると、洋館なのにどこか落ち着くのは、そのせいなのかもしれません。

廊下

映画のセットみたいですが、現役の職場です。

アーチが連続する長い廊下。奥に木の扉、右手に窓、左の壁は塗装が剥がれている
この写真、加工してません。

アーチが規則正しく並んで、その奥にまた扉が見える。まっすぐ伸びる廊下って、それだけで気持ちいいんですよね。

左の壁、塗装が剥がれているのが見えますか。あとで戻ってきます。

ドアノブを見てください

木の扉に付いた真鍮のドアノブの寄り。長年の使用で色が変わっている
ピカピカの復元品では、この色は出ません。

120年ぶんの手垢、と言うと汚く聞こえますが、これだけの人が触ってきたということです。磨き直された展示品には、この色は出ません。

重要文化財の扉に、「締切り」の札

アーチの奥の木の両開き扉。右に「締切り」の札、横に「京都地方税機構 業務課」の看板
看板と札、両方見てください。

廊下を歩いていると、こういう扉に出会います。

扉に貼られた「締切り」の札。そして横に吊られた看板には「京都地方税機構 業務課」

京都地方税機構というのは、京都府と府内25の市町村が一緒に税金の仕事をするために作った組織です。つまりこの扉の向こうでは、今日も誰かが税金の仕事をしている

「締切り」の札も、よく見ると下に小さく「京都地方税機構」と印字されています。観光施設の「立入禁止」ではなく、役所が自分の業務のために貼った掲示です。

重要文化財の扉に、事務的な札。ここが観光施設ではなく、まだ機能している役所だという、いちばん分かりやすい証拠だと思います。

保存と現役の、あいだ

アーチの奥、壁の塗装が大きく剥がれた一角。赤い絨毯と木の扉
こういう一角も、そのまま。

こういう一角もあります。壁の塗装が剥がれたまま。

きれいに修復された正庁や議場と、こういう場所が同じ建物の中にある。保存と現役のあいだにある建物、という感じがして、僕はここが結構好きです。

中庭

中に入った人だけが見られる景色。

石のアーチ越しに見る中庭。中央に大きなしだれ桜、夕方の空と旧本館の屋根
アーチ越しの中庭。夕方に撮りました。

アーチ状から見た中庭。

中央の桜は、八坂神社の上にある円山公園のしだれ桜の血を引いています。正確には、円山公園の初代しだれ桜の“孫”にあたる木。初代は昭和22年に枯れてしまったので、今の円山公園に立っている二代目とは、兄弟のような関係です。

桜を囲む植物は円山公園を彷彿とさせます。これは狙った演出なのでしょうか?

調べたら、狙ってました。しかも建物より前から

明治6年(1873年)、円山公園の初代しだれ桜が伐採されかけたことがあります。それを買い取って京都府に寄付したのが、当時の京都府の役人でした。円山公園の桜を救ったのは、京都府だったんです。

その31年後にこの建物が建ち、中庭にその桜の血を引く木が植わっている。偶然じゃなくて、続きだったわけですね。

外からは、見えない庭

塗装の剥がれた壁と古い木の窓枠越しに見える中庭の緑
窓枠も、壁も、そのまま。

四方を建物に囲まれた、ロの字の中心にある庭です。外から見ることはできません。この建物の中に入った人だけが見られる景色です。

新緑の枝越しに見る旧本館の外壁と窓
緑の向こうに、建物。春はこれが全部桜になります。

そしてここ、春はとんでもないことになります。

中庭には6種7本の桜が植わっていて、そのうちの1本には「容保桜(かたもりざくら)」という名前がついています。この場所、幕末は京都守護職の屋敷があった場所で、そのトップだった会津藩主・松平容保にちなんだ名前です。

新選組を預かっていた、あの容保です。あの人がいた場所に、今この建物が建っている。

……という話は、桜が咲いてから改めて書きます。今回は緑で許してください。

カフェ

建物の中に、あります。

さて、ここまで歩いてきて、そろそろ座りたくなってきますよね。

建物の中にカフェがあります。

木の扉の横に吊られた黒い看板「salon de 1904 by MAEDA COFFEE」
1904は、この建物が建った年。

その名も「salon de 1904(サロン・ド・イチキュウゼロヨン)」。1904は、この建物が竣工した年です。運営は、京都の老舗前田珈琲

カフェの入口。イーゼルに立てかけたメニューと観葉植物、足元に店名入りのマット
入口はこんな感じ。

内装、作り込んだわけじゃないんです

白い壁と茶色の腰板、赤い絨毯の店内。窓辺のテーブルと椅子、大きな花器
白い壁、茶の腰板、赤い絨毯。府庁本館時代のまま。

見てください、この空間。

白い壁、茶色の腰板、赤い絨毯。これ、内装を作り込んだわけじゃないんです。 府庁本館時代のものをそのまま使っています。テーブルや椅子も、一部は旧本館や旧知事公舎で実際に使われていたもの。

ちなみにこの部屋、元は人事委員会室だったそうです。人事の面談してた部屋でコーヒー飲んでる。(そう考えると急に緊張してきませんか?)

塗装が剥がれかけた高い天井と、真鍮のシャンデリア。アーチ窓に白いカーテン
天井を見上げると、これ。

天井を見上げると、塗装が剥がれかけたところにシャンデリア。

新品みたいな内装のカフェもいいですが、僕はこういう「時間が経ってしまったもの」のほうが落ち着きます。

木のテーブルに置かれた木目調の呼び鈴
押すやつです。押したくなるやつです。

そして、玉子サンド

手に持った玉子サンドの断面。分厚い玉子焼きとトマト、きゅうり
この厚み。

前田珈琲といえば、これ。分厚い玉子焼きがパンから溢れそうになっているやつです。重要文化財の中で食べる玉子サンド、というだけでもう勝ちなんですが、普通に美味しいので困ります。

木のテーブルに玉子サンドの皿と、白いカップに入ったコーヒー
コーヒーと。時間が止まります。

前田珈琲は1971年創業。半世紀愛された珈琲店が、120年の建物の中で店を出している。 この一皿の背景、なかなか濃くないですか?

行く前に、これだけは知っておいてください

ここ、行く日を間違えると建物の中に入れません。

旧知事室も旧議場も、見られる日が決まっています

内容
見学できる日火曜〜金曜、第1・第3・第5土曜
見学時間10:00〜17:00
見学できない日月曜・日曜・第2・第4土曜・祝日・年末年始

ややこしいのが、カフェは無休だということ(元日を除く)。

つまり、カフェは開いてるのに建物は見学できない日が存在します。日曜に行って「珈琲は飲めたけど、知事室も議場も見られなかった」という、いちばん惜しいパターンが起こりうる。

行くなら平日の火〜金。これが正解です。

※10名以上で行く場合は事前予約が必要です。また、京都府の行事等で見学できない日があります。遠方から来る人は事前に公式サイトで確認を。

まとめ

曇り空の下、庭木越しに見る京都府庁旧本館の全景
また来ます。

入場料、無料です。

重要文化財で、現役の官公庁で、日本最古で、写真も自由に撮れて、老舗の珈琲まで飲めて、タダ

京都は「点」で回るともったいない街だと思っています。有名な寺社の間に、こういう場所が普通に挟まっている。しかも空いている。

清水寺の人混みに疲れたら、ここに来てみてください。同じ京都とは思えないくらい、静かです。

次は春、桜が咲いた頃にまた来ます。中庭では毎年「観桜祭」が開かれていて、夜のライトアップもあるそうです。そのときは、この建物がなぜここに建っているのかも含めて、もう少し踏み込んで書きたいと思っています。

あと、ここから歩いて15分ほどのところに二条城があります。そっちもいずれ。

それではまた。

京都府庁旧本館

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町
地下鉄烏丸線「丸太町駅」から徒歩約10分/市バス「堀川下立売」から徒歩約7分
見学:火〜金、第1・3・5土曜 10:00〜17:00(祝日・年末年始を除く)
入場無料

salon de 1904(前田珈琲)

旧本館1階南東角
8:00〜17:00 定休日なし(元日を除く)
075-414-1444

※記事の情報は2026年9月時点のものです。見学日・営業時間は変更されることがあります。訪問前に京都府および前田珈琲の公式サイトで最新情報をご確認ください。
※建物の歴史・仕様は京都府公式サイトおよび文化庁の記載に基づきます。手すりの材質は現地案内による伝聞です。
※館内は執務中の場合があります。職員の方や他の見学者の迷惑にならないよう、静かにお願いします。

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